自社で就労ビザを取った外国人社員が退職するとどうなる?
自社でビザ(在留資格)を取ったものの、採用をやむなく取りやめたり、退職するケースもあります。その場合、在留資格や手続き等はどうなるのでしょうか。
在留資格認定証明書の取得後、入国前に採用をやむなく取りやめたり、内定辞退した場合
この場合、本人に送付した在留資格認定証明書を返送していただき、原本を会社から管轄の出入国在留管理局へ返納する必要があります。
郵送でも返納は可能です。その場合、封筒の表面に申請番号を記載してください。
万が一、本人が原本を返送しない等により返納が出来ない場合には、本人の居住地を管轄する日本国大使館へその旨連絡をしてください。
各所への連絡をしない場合、本人がその在留資格認定証明書を使用して入国する可能性があり、入国後、何か問題があった場合には企業側に問い合わせがあったり、他の外国籍社員のビザ申請において影響が出る可能性がありますので注意が必要です。
自社で在留資格(ビザ)を取った社員が退職した場合の取り扱い
在留資格そのものは本人のものとなりますので、退職したとしても在留資格が取り消されるわけではなく、そのまま他の会社へ転職することが可能です。
よく「外国籍社員が退職後に何か問題を起こした時に企業側に責任はあるのか?」と質問される事がありますが、ビザを申請した企業だからといって、退職後の本人の問題に関して責任を負うものではありません。
また、退職後、出入国在留管理局から本人に対し退職証明書を求める事がありますので、あらかじめ退職時に本人に渡しておくと良いでしょう。
このように、自社でビザを取得した社員の在留資格の取り扱いについては状況に応じて行っていく必要がありますので、その都度確認していただくことをおすすめします。
技術・人文知識・国際業務と企業内転勤の違い
就労ビザといっても多種多様であり、中でも一番多い選択肢が技術・人文知識・国際業務という在留資格となっています。この技術・人文知識・国際業務と同内容の業務に従事できるものの、取得条件が緩やかな企業内転勤というものもありますが、この在留資格の利用は他の在留資格と比べて少なくなっております。今回は、この二つの在留資格の違いについてお伝えいたします。
技術・人文知識・国際業務とは
日本における就労ビザのうち、最も一般的なのが「技術・人文知識・国際業務」です。
このビザは、専門知識などを活かし、技術の分野、人文知識の分野、国際業務の分野3つの業務分野に従事する為のビザで、必要な学歴や実務経験などを持つ外国人に認められる就労ビザとなります。
企業内転勤とは
企業内転勤ビザは,企業の国際化に対応し,海外の事業所から日本の事業所に転勤する外国人をスムーズに受け入れるために設けられたものです。
同一企業・グループ企業等の人事異動により、海外の事業所から日本の事業所に一定期間転勤して,技術・人文知識・国際業務ビザと同内容の活動を行う方が対象となります。
2つの在留資格の違い
技術・人文知識・国際業務は多くの職種において就労可能であり、転職も可能となっております。しかし、企業内転勤の場合には、親会社や子会社等の関係先でのみ就労が許可されている為、転職を希望する場合には、技術・人文知識・国際業務への在留資格変更許可申請が必要となります。
【成功事例】結婚ビザ2回拒否→許可
結婚ビザの成功事例をお伝えします。
【ケース】
・妻:日本生まれ、永住者、無職、子供が生まれたばかり、実家暮らし
・夫:フィリピン在住 無職
という状況です。
【拒否理由】
ご自分で申請した1回目のビザ拒否の理由として、入管は金銭面の問題、
銀行の残高証明書がないからダメと言われたとのこと。
なので、2回目の申請で銀行の残高証明書を出した・・・結果、再度拒否。
子供もいるのになぜ?子供の父親なのに生まれて1年も会えてない・・・
奥さんは混乱状態。
その後、私達の事務所へご相談されました。
入管の拒否理由に注意
注意しなければいけないのは、入管の拒否理由です。
- 〇〇の書類がないといわれた
- 〇〇の書類があれば大丈夫と言われた
これは、多くのご相談者がおっしゃる事ですが、残念ながら、指定の書類をだしても、ビザがもらえるわけではありません。
便宜上、入管は理由を付けなければいけないので、書類が・・・と言っているだけなのです。
他にもビザを出さない理由がある事が大半です。
今回も、残高証明がないと言われたから提出したのに拒否されています。
何が「本当の問題か」を突き止める
私達の仕事の大部分がビザを取るための戦略設計だと考えています。
その為には、なぜ入管がビザを出す事を拒否しているのかを突き止めなければいけません。
理由は個別に存在します。
特に、結婚ビザと呼ばれる種類のビザは、就労ビザや留学ビザよりも自由度の高い強いビザなので、審査も厳しくなります。
結婚しているから大丈夫
子供がいるから大丈夫
ではないのです。
出さない理由に注目する
入管の審査は減点方式です。
ビザの出る条件を持っていても、それ以外に減点要素があればビザは出ません。
考え方として、ビザを出さない理由を消していくことが重要です。
さらに、出身国の心象もあります。
不正や問題の多い国の出身であれば、当たり前のように影響を受けます。
今回のケースは金銭面+ご本人達の状況説明+将来設計+在日家族の状況を総合的に判断する必要がありました。
審査期間5か月、何度も入管から電話確認→ビザ許可
あらゆる方面からビザを出さない要素を消していき、ご本人達にも協力してもらいました。
入管からも何度も電話があり・・・これはどういう事ですか?これは・・・と質問と確認が続きました。
審査官と同じ目線・問題意識・負けない知識で話せるのが我々の強みですね。
質問の内容でどこが引っかかっているかわかります。
そして、ご家族にも協力をしてもらう事で、「ビザを出さない理由」を可能な限りゼロに近づけました。
その後、無事に許可。
今では、無事に入国し、子供とみんなで仲良く暮らしています。
今回のケースは、多くの関係者がみんなで同じ方向を向いて進むことがポイントでした。
本当にありがとうございました!と言われると、長年この仕事をやってきて良かったなとしみじみと感じます。
就労ビザの種類
就労ビザは、業務内容によってビザの種類が異なります。
就労ビザの種類ごとに許可された業務内容が存在し、許可された業務と許可された就労ビザの範囲内で働くことができます。
注意しなければならないのは、就労ビザがあってもどんな仕事でもできるわけではありません。
例えば、通訳として就労ビザを許可されている外国人は、建設現場の作業員として働くことはできませんし、外国料理の料理人として就労ビザを持つ外国人は、コンビニエンスストアの店員として働くことはできません。
許可された就労ビザの範囲外の仕事をしている場合には不法就労となってしまいます。
また、就労ビザを持っている外国人が日本人と結婚した場合、就労ビザと日本人の配偶者等の両方に該当することになりますが、ビザを複数持つということはできない為、どちらか一方を選択することになります。
主な就労ビザの種類
↑クリックしてください
どんな仕事も可能なVISA 4種類
一般的な就労ビザと呼ばれるものは、どんな仕事でも出来るわけではありません。
就労ビザは、限られた範囲内での業務にしか従事できませんが、身分系ビザと呼ばれるものを持っている方であればどのような業務にも従事することが出来ます。
今回は、身分系ビザの種類についてお伝えいたします。
〇永住者
在留資格が「永住者」となっている方。
一定期間日本に住み、永住許可を受けた方です。
永住者となれば、就労制限はなく、どのような仕事にも就くことが可能です。
在留期限は無期限です。
〇日本人の配偶者等
日本人と結婚している方、また「等」の中には日本人の子供も入ります。例えば、母親は日本人、父親はアメリカ人でアメリカ国籍を選択しているという場合にはこのタイプのビザになります。
在留期限は6月、1年、3年、5年とその都度更新が必要です。
〇永住者の配偶者等
永住者と結婚している方、そして「等」には永住者の子供も入ります。しかし、子の場合は日本で生まれた場合にこのタイプのビザになる為、多くは子供の頃に永住者となっているので就労現場で見かけるのは配偶者のパターンだと思います。
在留期限は6月、1年、3年、5年とその都度更新が必要です。
〇定住者
日本人と結婚していたが離婚した方、日本人の子供を育てている方、祖父母が日本人のいわゆる日系の方、難民等と認められた方、定住者の方と結婚している方などがこのタイプのビザとなり、一番取得ルートが多いパターンのビザとなります。
在留期限は6月、1年、3年、5年とその都度更新が必要です。
上記のビザがいわゆる身分系ビザと呼ばれるものであり、その身分が変わらない限りビザを持ち続けることになります。
また、就労ビザを持っている方が日本人等と結婚した場合でも、必ず身分系ビザに変更しなければいけないということはない為、そのまま就労ビザのままというケースもあります。
現在、就労ビザでは認められていない単純作業にも従事可能ですが、留学生と違い日本語を使用せずに生活している方も多く、日本語の能力に差があります。
会話は出来るが読めないという方の場合、コロナ禍で仕事を失ってしまい、日本語能力の問題で再就職が出来ないという声もよく聞きます。
就労制限のない彼らだからこそ、就労現場で活躍の幅が広がる事を願っています。
ビザの審査とはどのようなもの?
外国人のビザの審査は、必要書類を提出すれば必ず許可が出るというものではありません。
許可が出ないという事も多くあります。
入管法はその性質上、国の裁量を意味する言葉が多く存在しています。
特に、入管法上、国内にいる外国人の更新や変更などの手続きについては大きな裁量が働きます。
日本に入国・滞在しようとする外国人には様々な人がいます。
不正な目的を持って日本に入国しよう(させよう)とする人達によって審査をかいくぐるために悪用されることも考えられる為、国は、審査内容の一部は公開しても、すべての審査内容は公開していません。
様々な状況によって審査事項が追加される事や判断基準も変わる事がありますし、各地方出入国在留管理局によっても審査結果に差が出ることがあります。
このような裁量の大きさに賛否はありますが、日本社会の安全と安心を守る事を考えたシステムです。
また、許可の条件をそろえる(加点方式)よりも、許可できない理由(減点方式)の審査であることも重要です。
許可されない理由を潰していかなければ、条件があるとしても許可されません。
外国人のビザ審査とは特殊な手続きであるということを理解し、申請前にビザの許可を得るための入念な準備をすることが重要です。
外国人雇用のポイントと注意点
どのような人材が必要かを明確にする
外国人材を雇用するといっても、出身地域によって、また職種によってスキルも個性も様々です。
その為、まずは、どのような人材を募集するのか明確にすることが大切です。
- 日本語の能力は必要か、必要だとしてどの程度のレベルが必要なのか
- 日本語でのコミュニケーションが取れれば良いのか
- 漢字を含めた日本語の読み書きも必要か
- 日本語は喋れなくても仕事のスキル、センスがあればよいなど
日本人とは異なる軸が必要となります。
日本語レベルは注意が必要
ホワイトカラーの企業が求める外国人の日本語レベルはN1レベルといわれております。
しかし、私の痛い経験からもお伝えしたいのが、N1があっても注意が必要という事。
日本語がわかる事と言葉の本質が理解出来る事は違うのです。
その為、会話は成り立っているように見えて、言葉の意図、なぜそう言われているのかが全く理解できていない状況が起こります。そして、少しずつ質問と回答がズレていきます。
そういう意味では、N1がなくても本質的な理解が出来る人材もいます。
ホワイトカラーの仕事の場合、自分の頭で考えて仕事をしてもらう事が必要です。その辺りも気にしてみてほしいですね。
国籍よりも個人を
経営者の方はよく「どの国の外国人が良いか」「親日の国だから」といった出身国で採用を検討していることがあると思います。
しかし、出身はあくまでもひとつの判断基準に過ぎません。
日本人でも良い人もいればそうでない人もいます。
親日の国とされていても思ったような人材とは限りません。
どのような人材を望むのかにおいて出身は色眼鏡となってしまう可能性があるので気を付けていただきたいところです。
お互いのミスマッチを防ぐ為にも、採用前に求める人材像をはっきりさせておくことから始めましょう。
私達はプロジェクトマネージャーでもある
どんなプロジェクトも、プロジェクトを管理する人がいなければ上手くいきません。
行政書士という仕事は、書類を作るだけと思われているかもしれません。
しかし、それでは不測の事態に対応できず、そもそものプロジェクト(依頼・申請)がとん挫することがあります。
特に経営・管理ビザでプロジェクトマネージャーの資質が問われる
経営管理ビザの場合、ビザの条件を一から作っていくことになります。
知識は前提として、ノウハウの部分がかなり重要です。
そして、お客様をゴールまで連れていく、プロジェクトを管理していく必要もあります。
「AをするのでBをお願いします。」「Cになる場合Dになりますのでその時はEをしてください」
先回りしてご案内していきます。
ビザの審査は、書類よりも実態が重要です。実態の証明が書類です。
順番を間違えてはいけません。
そして、スケジュール通りに物事が運べばよいのですが、複数の人間が関わる事です。
考えもしなかった事態になったりもします。
そうならないように(なったとしても)現状を把握し、期限を管理し、起こり得る事態を想定して進めます。
両輪が回らなければ上手くいかない
プロジェクトは車の両輪のようです。両輪が回らなければ上手くいきません。
お客様から書類をもらって、その書類を基に申請書を作る。
それだけで終わるのであれば私達は必要ありません。
お客様自身でもできますし、今後は書類そのものが必要なくなります。
依頼されたプロジェクトを成功に導く役割を担うことも私達の仕事ではないでしょうか。
ビザ申請が不許可になる理由
「就労ビザの申請をしたけれど不許可になってしまった」ということは少なくありません。
でもどうして不許可となるのでしょうか。
再度申請して許可は下りるのでしょうか。
今回は実際にあった事例を参考にその理由をいくつかお伝えいたします。
1 業務内容が問題となるケース
就労ビザを申請する際、その多くが「技術・人文知識・国際業務」というビザを申請することになると思いますが、この就労ビザは簡単に言えばオフィスワークのビザであり、オフィス業務以外に従事するという場合には不許可となることがあります。
例えば、留学生時代からアルバイトをしていた飲食店に就職が決まり、就労ビザへの変更を申請したものの、従事する業務が店舗業務であると判断されて不許可となる場合があります。
店舗業務はオフィスワークではない為に許可されません。(研修としての一時的な従事については→こちら)
また、同じく留学生からアルバイトをしていたお弁当工場に就職が決まり、就労ビザへの変更を申請したものの、現場作業に従事すると判断され不許可となる場合があります。
ちなみに、これらは例え雇用契約書上別の業務に従事すると記載されていても様々な理由から現場仕事に従事する可能性が高いと判断され、不許可となる事もあります。
また、マッチングの問題というものもあり、学校での専攻と従事する業務が異なる場合にも不許可となることがあります。
しかし、こちらについては大学を卒業したのか、専門学校を卒業したのか、本国の大学を卒業したのか、日本の大学を卒業したのかによって判断が分かれます。
さらに、就労ビザをいったん許可されたものの、ビザの更新時に許可時に申請した業務に従事していないと判断されて不許可となるケースもあります。
2 留学生時代のアルバイトが問題となるケース
このケースで多い不許可理由として、留学生本人のアルバイト時間超過という問題があります。
通常、留学生に認められるアルバイトの許可(資格外活動許可)は週28時間となっています。
しかし、近年の私費留学生はこの時間を超過することも多く、時間超過が判明した場合には、許可された内容に応じた活動をしていない(真面目に勉強していない)と判断され、就労ビザへの変更申請が不許可になることがあります。
また、同じく学校への出席率等についても一定程度学校へ行っていない場合には同様の判断がなされています。
このような素行不良といわれる場合には、不許可になった後、再度申請を行ったとしてもビザの変更が許可されない事が多く、その場合には一度本国へ帰国した後、日本に呼び寄せる形を取らなければなりません。
ただ、帰国して申請したからといって許可が出るとは限りません。素行不良を入管は重く受け止めます。
このように、不許可の理由といっても様々であり、本人の問題なのか、業務上の問題なのか、その理由は様々です。
就労ビザを申請する際には、あらゆる角度から懸念事項を洗い出し、準備する必要があるでしょう。
ビザ(在留資格)の更新はいつからすべき?
現在就労ビザを持っていても、多くの就労ビザには期限がある為、外国人社員と企業はその在留期限までにビザの更新申請を行わなければいけません。今回は在留資格の更新申請についてお話します。
在留期限の3か月前から更新申請可能
就労ビザの在留期限は在留カードに記載されています。
そして、その在留期限の3か月前から更新申請が可能となります。
なお、いつまでに更新申請をしなければならないという決まりはなく、在留期限までに申請を行えば問題ありません。
在留期限までに更新申請を行えば、期限が切れたとしても、最長2か月間は適法に滞在が可能です。
在留期限までに新しい在留カードをもらわなければならないわけではありません。
しかし、気持ち的にビザが切れているというのが落ち着かないという方も多いため、余裕をもって申請されたほうがよいでしょう。
新しい在留カードが交付され、在留カード番号も新しくなる
在留資格の更新申請を行い、許可されると、新しい在留カードが交付され、今まで使っていた在留カードにはパンチで穴が開けられ、本人に戻されます。
それに伴い、在留カード番号も新しくなります。また、在留期間も1年、3年、5年等新たな期間が許可されます。
この在留期間は、企業への信頼、そして本人への信頼で変わってくるため、1年間の次は必ず3年間もらえるという性質のものではありません。
出入国在留管理局としては、企業に外国人社員の管理を行う責任を求めています。
在留資格を更新してすぐに社員が退社したり、外国人社員の定着しない企業の場合、3年や5年といった長期の在留期間が許可されにくくなります。
また、本人に対しても、転職を繰り返していたり、入管法上求められている届出義務を行っていない、納税義務を怠っている場合等には3年や5年の長期間の在留期間は認められにくくなります。
ビザの更新が不許可となることもある
過去の申請内容と相違点がある(過去に申請した業務内容と実際の業務内容が異なる)場合や、申請時点で会社に所属していない場合等は申請が不許可となることがあります。
このように、随時手続きを行っていく必要がるため、企業としても、受入機関として外国籍社員の在留期限等を把握し、適切に情報を管理していく必要があります。